イベント人物八王子市

伝統芸能 「八王子車人形」を若い世代へ

先月、国の重要無形民俗文化財指定に答申された「八王子車人形」。江戸時代末期、山岸柳吉(初代・西川古柳)が、箱型の車に腰掛けて、1人の人形遣いが一体の人形を操る車人形を考案し、八王子に伝えられて以来、八王子車人形西川古柳座(八王子市下恩方町)により継承されてきた伝統芸能です。コロナ禍で公演ができなくなる中、五代目・西川柳玉さん(25歳)が新しい取り組みにチャレンジしています。

西川古柳座五代目家元の西川古柳さん(右)と五代目・西川柳玉さん=西川古柳座稽古場で

2018年12月 五代目・西川柳玉を襲名

 柳玉さんは「八王子車形」西川古柳座五代目家元・西川古柳さんの一人息子で、2018年に五代目・西川柳玉(りゅうぎょく)を襲名しました。父親と同じ芸能の道に進むとは思ってもいなかったという柳玉さんですが、大学在学中に海外公演の手伝いで一座に同行したのをきっかけに、心境の変化が。「それまでは人形芝居にさほど興味がありませんでしたが、人形遣いの難しさや奥深さ、お客さまの反応を間近で感じ、真剣に究めてみたいと思いました」。

 二十歳で弟子入りし、襲名後は人形遣いの基礎を学ぶために約1年間、兵庫県の淡路人形座へ武者修行に。
そこで実感したのは、人形芝居が老若男女に親しまれ、地域に根差していることでした。

若い世代に八王子車人形を広めたい

 コロナ禍の影響で公演が減り、八王子車人形を披露する機会がない中で、何かできることはないかと始めたのがSNSでの情報発信やYouTubeチャンネルの開設。車人形の仕組みや動かし方などを解説した動画やショートムービーのほか、人形遣いの活動や日常などを投稿。最近では南大沢警察署と車人形がコラボした特殊詐欺防止の動画も好評です。「八王子に住んでいても車人形を知らない方も多いので、子どもや若い世代にも気楽に見てもらえるような動画を作成しています。伝統を守りつつ新しい発想で多くの人に八王子車人形を知ってもらえたら」と柳玉さん。

首(かしら)= 西川古柳座には120以上の首が保管されている

車人形の魅力とは 今後の目標について

 車人形はその名の通り、「ろくろ車」と呼ばれる箱型の車に腰掛けて、1人で一体の人形を操ります。
右手で人形の右手と左手に付けられたひもを操作、左手で人形の首と左手を操作し、人形のかかとに付いた「かかり」を足の指に挟んで人形の足を動かします。3人で一体の人形を操る「文楽」と異なり、人形の足が直接舞台を踏めることでより人間らしく力強い演技が可能です。

 遣い手によって操られた人形は、時に人間以上に豊かな表情を見せることも。車人形の魅力を伺うと、「男性か女性かだけでなく、性格や演じる役柄によって人形の動かし方も変わり、演技の奥深さを感じます。今は師匠である父や先輩座員の見まねで技術や表現力を磨いています。せっかく稽古場に舞台があるので、若手座員を中心に毎月定期公演を行い、車人形でもっと地域を盛り上げていけたら」。

八王子車人形西川古柳座公演
古典をつなぐ車人形
一部=義太夫「傾城阿波の鳴門」十郎兵衛内の段
二部=新内浄瑠璃「芝浜」
※開演前に若手による三番叟もあり
日時:3月4日 午後3時開演
会場:いちょうホール大ホール
料金:全席指定4000 円

●問い合わせ 八王子車人形西川古柳座 ☎042-652-1222

ショッパー 八王子周辺版 2022年2月25日号掲載

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました
sub1
sub1
previous arrow
next arrow