生活八王子市

【取材記事】里山を荒らすシノ竹を活用した籠づくり「メカイ」の製作技術が都の無形民俗文化財に!

八王子市や多摩市に伝承する、シノ竹で編んだ六つ目の籠「メカイ」の製作技術がこのたび、東京都の無形民俗文化財に指定されました。都が民俗技術として指定した文化財の第一号(初)となり、保存団体として認定された八王子由木メカイの会に話を聞きました。(写真:「八王子由木メカイの会」の皆さん。後列左から2番目が代表の塩谷さん)

八王子発祥・多摩地域に広がったメカイ作り


▲背の先端に角が付いた、特有な形状のメカイ包丁

「メカイ」とは、多摩地域の里山に自生するシノ竹(アズマネザサ)を六つ目に編んだざるや籠のこと。文字では「目籠」と表記します。八王子の宇津貫村(現・八王子市みなみ野)が発祥とされ、江戸時代の終わり頃から昭和前半まで、南多摩地域の多くの農家でメカイ作りが行われていたと言います。メカイは農作業や炊事用など日常生活用具として重宝されたほか、都市部の商店や料亭に出荷、販売もされ、農閑期の副業として重要な収入源になっていました。

南多摩のメカイ製作技術の特徴とは


▲胴部を編み終えたら縁巻きをしていく


▲補強のための力骨を入れる作業もメカイ包丁が役立つ

「南多摩のメカイ製作技術」が、他所の竹細工と異なる特徴の1つは、メカイ包丁を使用していること。背の先端に角が付いた当地特有の形状をした包丁は、シノ竹を割ったり、シノ竹の表皮を薄く剥いで編み材となる「ヘネ」を作る際や、補強のために入れる竹製の「力骨」の曲がり部分を削ったり、力骨を底から縁に差し込むのにこの角が役立つのだそう。

また、芸術的な完成度は求めない日用品だったため、訓練すれば誰もが作れたこと、編み材のヘネは乾燥させず青いまま使うといった特徴があります。放っておくと増え続け、伐採する必要があるシノ竹を再利用して製作するメカイは、里山を守る大切な活動でもありました。

メカイの技術を継承するため会を結成

かつて南多摩地域で広く作られていたメカイも、昭和30年代になるとプラスチック等の工業製品の普及により徐々に衰退。都市開発によって里山は切り開かれ、人々の生活環境も一変しました。メカイ作りの技術を持っている人たちが年々少なくなり、継承が必要なことから、平成14(2002)年に八王子由木メカイの会が保存・普及活動を開始。秋から春にかけて週1回集まり、シノ竹の伐採からメカイを編む一連の作業を実践したり、年に数回、講習会やイベントを開いて地域の人にメカイ作りを教えたりしています。

同会代表の塩谷暢生さんは、「先輩たちの努力と願いが実り、私たちが20年にわたって取り組んできた『メカイ』の製作技術が東京都の無形民俗文化財に指定され、多摩市の多摩めかいの会とともに保存団体として認定を受けました。大変嬉しく思うと同時に、若い世代への継承なしにはこの伝統技術は途絶えてしまう危機感もあります」と話していました。

ショッパー八王子周辺版 2023年4月7日号掲載

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました
sub1
sub1
previous arrow
next arrow