11月1日は犬の日。相模原市の麻布大学で、犬の行動や人との関わりがもたらす効果を研究する中、毎日愛犬を連れて出勤する教授がいます。犬との共生について自ら実践しつつ、近隣住民が参加できるイベント等、地域とのつながりも模索しています。(写真:菊水さんと、毎日一緒に出勤する愛犬のケビン・クルト。信頼し合っている様子が伝わります)
人と人をつなぐ存在に
麻布大学獣医学部動物応用科学科、介在動物学研究室の教授、菊水健史(きくすい・たけふみ)さんは鹿児島県出身。子供時代は犬を飼う機会がなかったそうですが、親戚の犬と触れ合う中で犬の縄張り意識、人間と意思疎通する様子を見て興味が湧き、やがて動物の行動を研究する道に進みました。大事なことを伝える際には指差しで意思疎通
最初に犬を飼ったのは約20年前、アメリカ留学時代のこと。スタンダードプードルのコーディーを連れて歩くと言葉や人種の壁を越えて友人ができた経験から、「自分が幸せを感じるのはもちろん、人と人をつないでくれる存在」と考えています。現在は、コーディーのひ孫に当たるケビン・クルトを連れて毎日大学まで車で出勤。犬の習性やコミュニケーション手段を研究するためでもありますが「一般企業でも犬連れ出勤や〝育犬休暇〞があっても良いのでは」と話します。一部の外資系やベンチャー企業ではペット同伴出勤を許可しているところもありますが、動物を介して人間同士の会話が増えたり、パフォーマンスの向上につながったりするメリットがあるそうです。ただし「鳴き声や臭いといった点で同僚への配慮も必要です」と菊水さん。ペットキャリーのメーカーと協力し、ケビン・クルトを連れて学内での移動や食堂利用に問題がないかも検証中です。
人と犬の共生からもたらされる恩恵
最近では、人と犬が共生することによってもたらされる社会的恩恵についても研究。犬を飼うと家族や地域住民間の声掛けが増えるのをはじめ、「飼育が多い街では犯罪発生率が低いというデータもあります」。防犯対策の他、ひいては公園等の整備、経済効果が期待できる面もあり、「地域活性化や住民同士のネットワークにつながると思います」。
その効果を実証する場の一つとして来年1月6日(土)7日(日)に麻布大学で、近隣住民が参加できる「わんわんマルシェ2024」を初開催予定。相模原市中央区や地元商店会と協力し、地域のつながりと住民の幸福度を高めることを目指す試みです。詳細は麻布大学ホームページを参照。

「ヒト、イヌと語るーコーディーとKの物語」
(東京大学出版会)も2月に出版
